有名テック企業の技術ブログを、ひとつのフィードで。
フィード
33件
技術情報のキャッチアップは、業務が忙しくなると最初に削られます。意志の問題ではなく、情報収集が時間を細かく、けれど継続的に消費する活動だからだと思っています。newmoでは立派な仕組みを作るより、忙しい週でも続く軽いものとしてエンジニアミートアップを行なっています。 Engineering Meetup とは newmoには「Engineering Meetup」という場があります。週に一度、エンジニアリングに興味のあるメンバーが話題を持ち寄る1時間のランダムトークです。毎週金曜の夕方に、所属や雇用形態を問わず誰でも参加できます。テーマはWebでもモバイルでもクラウドでも自動運転でも、最近読んで面白かった本でもよく、「newmoのここに困っている」といった仕事の話も歓迎です。 コンセプトは「準備を頑張らずにゆるく話す」。資料は作らず、話したいテーマをNotionに書いて当日集まって話します。参加は強制せず、忙しい週は欠席でも、耳だけのラジオ参加でもよく、最低2人集まれば開きます。 モチベーション 一人で技術の変化を追い続けるのには、限界があります。割ける時間と注意が有限だからです。だったら一人で抱えるより、チーム全員が薄くアンテナを張って持ち寄るほうが、広く拾えます。持ち寄って話すこと自体が、お互いの興味や困りごとを知る機会にもなります。そして拾ったものを読んで終わりにせず、自分たちのコードや仕事へつなげたい。このやり方は、負荷を分担すること、消費で終わらせないこと、お互いを知ることのために続けています。 やっていること エンジニアミートアップをやるには何かしらの話すネタ集めが必要です。 ネタ集めの仕組み自体は目新しくありません。Slackで気になったメッセージ(記事、リリースノート、インシデント、誰かの登壇やブログ)に、専用の絵文字(:meetup_neta:)を押します。するとReacji Channelerが、それをネタ帳チャンネル(#nm-dev-meetup)へ自動で集めてくれます。 engineer-meetup 肝心なのは、投稿し直す手間がないことです。読んでいる場所でスタンプを押すだけなので、忙しい週でも止まりません。 絵文字はあえて1種類にしています。「紹介したい」「聞きたい」と意図で分けたくなりますが、分けると押す前に迷いが生まれ、その一瞬が手を止めます。信号は「気になった」の一点でいい。分類は、後で人が話すときにやれば足ります。 週に一度、溜まったネタをClaude Coworkに渡し、古い順に要約してNotionのmeetupページにまとめさせます。各ネタはSlackやNotionを検索させて背景を補わせます。これがその週のアジェンダになり、あとは毎週の定例でそれを見ながら話します。 Coworkでスケジュール実行しているプロンプトもすごく単純です。 Notionの「Engineering Meetup」の今日のmeetupページにネタを古い順でまとめてください。 * Slackの#nm-dev-meetupから古い順まとめてください * 前回のものを見てサマリの書き方は見てください * サマリに必要な情報はSlackやNotionなどを検索してまとめてください 線の正しさは、点が一定量ないとわからない 集めたネタは、ひとつひとつが点です。その点を並べて「これはこういう流れですね」と解釈する、つまり線を引くのは、そんなに難しくありません。これは人だけでなくAIにもできます。情報を渡せば、AIはもっともらしい線をいくらでも引いてくれます。 問題は、その線(解釈)が当たっているかどうかです。そして線の正しさは、点が一定量ないとわかりません。研究の作法を扱ったリサーチのはじめかたという本に、点が少ないとその点を通る線は何本でも引けてしまう、という話があります。資料が少なければ解釈は無限にある。これは引く主体を問いません。人が引いてもAIが引いても、点が少なかったり偏っていたりすれば、それらしいだけの線(解釈)になります。 点がひとつしかない、あるいはほんの少ししかないときに、どうやって点と点をつなぐことができるだろう。まだほんのとっかかりの段階で、解釈や議論──点と点を結ぶ推論の線──をどうして描きはじめることができるだろう。点がひとつ、ふたつ、あるいは三つしかないとしたらどうだろう。 (...中略...) 研究の初期段階では、問いや解釈の可能性が無数にあるから、点と点を結ぼうとしてもあっという間に収拾がつかなくなる。つまりこのパズルは解けないのだ。これほど「点」の数が少ないと、その点を通る線は何本でも引けてしまう。つまり研究者目線で言えば、資料の数が少ないときは、筋立ても解釈も無限に存在することになる。 -- リサーチのはじめかた - トーマス・S・マラニー、クリストファー・レア そのため必要なのは、全員が薄くアンテナを張って、点をたくさん、いろんな方向から集めることです。点が増えるほど引ける線は絞られ、それらしいだけの線が当たる線になっていきます。 たとえば、この数ヶ月のサプライチェーン攻撃がそうでした。axiosやCheckmarx/Bitwardenの侵害(4月)、TanStackのpostmortem、Nx Console拡張の汚染(5月)、CAMPFIREの不正アクセス調査レポート(6月)。どれも単発で見れば「物騒だね」で流れていく点です。 それが数ヶ月、複数人のアンテナで溜まって初めて、「漏れたトークンがCI/CDを踏み台に本番へ権限昇格していく」という一本の線が見えてきました。1点や2点では、ここまでの線は引けませんでした。 場をひらき続けること いちばん大事だと思っているのは、毎週決まって話す場があることです。ただ、この場の目的は、その場で答えを出すことではありません。持ち寄ったネタを声に出し、お互いのアンテナを重ねて、拾えるネタを増やしていき、コミュニケーションに繋がる。それが場の役割です。 たまに「これ先週のあれと繋がるね」と、その場で点と点がつながることもあります。でもそれは狙って起こすものではなく、点が十分たまったときに、ときどき現れるくらいのものです。毎回つなげようと気負わなくていい。点を持ち寄り続けることのほうが、ずっと大事です。 場そのもの(カレンダーの繰り返し予定とMeetのリンク)を用意するのは簡単です。本当に必要なのは、誰かが口火を切り、参加に濃淡があっても回り続けること。スタンプも顔出しもコストは下げてあるので、回す人さえいれば成立します。 線は誰にでも引けます。けれど、その線が正しいかどうかは、集めた点の数と多様さでしか確かめられない。だから私たちは、立派な仕組みを作るより、気になったネタが集まる場として、エンジニアミートアップをやっています。